2007-05-06 中国に老人ホームが増えている [長年日記]
okurayama_yokohama
どうやらお隣の国、中国でも老人が増えて老人ホームの建築などが進んでいるという。中国を旅していて感じたのは大家族で住んでいるということ。おじいちゃんおばあちゃんもいれば孫たちもいて、とにかく大所帯のイメージが濃い。だが、NHKのドキュメンタリーを見ていると都市部では老人ホームの建築ラッシュで入居者もかなり多いという。どうやら「ご老人に厳しい」=「若者も厳しい」というのが中国の実情らしい。
我々、日本人も経験してきたことだけれども、時代が進むにつれて多様化した世界が広がることになった。職業も何もかも能力に応じて選び放題の世の中である。豊かで自由な世の中ってやつだ。でも、これって本当にそうだろうか?普通に進学して普通に就職して…という流れを考えると、どうしても都市部に若者が流入していくことになる。そして都市部に定着する。また、こんなに選択肢が広がってしまうと何が自分に合っているのかを吟味しなければならない。これがまた難しい。目の前に「これしかないのだから」とがんばるなんて到底できない。
自分もそうだし、周囲の友人たちもほとんどがそうだ。「これかな?」と選んだ職業、一度ドロップアウトしたら戻れない社会の仕組み、などなどが足かせになって苦労は並々ならぬものだ。実際、実家に帰って新しい仕事を見つけて、しかも親を養うというのは無茶苦茶ハードルが高い。自己実現を捨て、就職の幅は狭く賃金も安いのに、親も養うなんて、自分には難しいと下を向くしかない。日本の歴史を鑑みても、育ててもらった親の面倒を見ることができた方がいいに決まってるし、可能な環境を持っているのに理由もなくやらない人も少ないと思う。頭で分かっていても、財布と体がついていかない。当たり前のことをするのがこんなに難しいなんて…。
対して、ご老人の方もまさかこんな世の中になるとは思っていなかっただろう。何十年も会社人間として勤め上げ、気がついたら子どもがどっかに行っちゃう世の中になっちゃった。仕事一筋にがんばれる人生を歩み、高度経済成長を支え、バブルで人生を謳歌して、最も人生を楽しんだ世代だとしか思えないけれども、最後にこれでは人生が締まらない。「なんでこんなに豊かな世の中になっているのに子どもはどこかに行っちゃうんだ?」と思っておられるに違いない。若者もご老人も「仕方がない」が体を取り巻いているのが現代日本なのだ。
私たち日本人は、この「仕方がない」状況を数十年かけて築いてきた。だが、中国はたった数年しかかからずに、同様のことを体験しているという。こうなると、誰も何が正しいか、何が間違っているか、分からなくなっちゃっているのではないか?私自身はここ10年ほどのタイの現状を見て「日本に似てきたので危ない」と思うし、そういうことをタイ人に話したりもしたのだけれども、中国は状況展開が早すぎる。たった5年で上海は一気に高層ビルが建つようになった。上海のとあるエリアでは、例えば南大阪とか世田谷区の端っこのようなところが、丸の内以上のビル群に変貌した。ご老人のことを一例に、あらゆることが予測不可能になっている現代の中国。中国人はおろか、世界中の人が中国を予測できなくなってきているので、なんだか怖くなってきた。まず、人の心がバラバラになるということを防がねばならないのだが、小さな私の中に妙案はない。