2004-04-12 白豪主義 [長年日記]
BAMIYAN
暴走した。何人かは暴走しそうになり、一人は確実に爆走した。5人のうち、ひとりだけ女の人で、一人だけ白色人種であるイローナがキレた。泣いた(らしい)。というのを、夜メシどきに創くんと淳くんから聞いた。その矛先は自分とヨシヤだった。初日に毛布の件で派手にモメたこと、バンデアミールで写真を撮りたいために「車を止めてくれないか」と執拗にドライバーに言ったこと、あと4人が日本語で会話していることにも混乱しているという。また彼女はベジタリアンで、肉ばかりのこちらの料理にもマッチしていないようだ。それらが積もり積もってパンクしたらしい。女の人、ということには気遣ってきたつもりだ。「女の人だから」ということで特別扱いしたことに、どうこう言いたい社民党っぽく、かつキャリアウーマン風のあなたは黙っていてくれ。それはこの国を知らなさ過ぎる発言だからだ。はっきり言おう。知らなさ過ぎる、という点で彼女は本当に問題を持っていた。無知は罪である。そしてそれを抱えてしまったのはオレとヨシヤということだ。母国がオランダで、英語は通じて当たり前。アジアの人たちは英語を勉強すべきだ、などという常識で頭がいっぱいになっていること。白人と出会わなかったときのことも考えずに我々とグループになったこと。何の準備もしていないこと。「まともな教育を受けていない人だから仕方ないわ」という彼女の姿勢(これが一番受け入れられなかった。だって、教育のないところには音楽があったり、それに代替する文化は必ずある。もっというなら、それを抑制してきたのがタリバンなのである)。何をとってもこの国に滞在するのには適さない考えと資質なのだから。あと、受け入れられなかったのは、ベジタリアンということ。やるのは勝手だけれども、それのせいでこちらまでメシ屋選びに振り回されているのだ。肉しかない国なのに。カブールでもバーミヤンでも彼女が菜食主義者だからという理由で、野菜を買ってきて自炊したし、その対策もなしに来たのかと思うとあっけに取られる。何でオレのガスコンロやフライパンを持ってしてその対策をしなきゃならんのか?と不思議に思う。郷に入っても、郷に従えないままパンクしただけなのだ。用意をしてきた自分とヨシヤはこうなることを、日を重ねるごとに感じていたのだが、まさかこんなに早くこうなるとは予期していなかった。本当ならば、「何で入国に関しての準備をしてこなかったのか」とか「菜食主義っていうけれども、動物はダメで植物はいいってどういうこと?食物連鎖のとおりに生きるのが人の道じゃないかな?特にここはアフガンですよ。肉しかないのは教育以上に常識ですよ」と、さらにワンワン泣くようなことを言ってやりたかったが、こらえた。イローナはオレとヨシヤを勝手で理解できないと言った。しかし、しかしだ。昨日、確かに車を止めてくれと言ったけれども、最初に言い出したのはスペイン人のカルロスだし、彼などそのままどこかに行ってしまい、クルマの発車時刻になっても帰ってこなかったではないか。白人ならいいのか?おい。
こいつとは合わないな、と思った。グループを分解することも考えた。オレとヨシヤだけなら気楽である。互いに面倒をみなくていい上、9年目に差し掛かる仲だけに阿吽の呼吸ができあがっているからだ。ここで創くんが口を開いた。「ウラさんとヨシヤさんのやることには僕も理解できないところもありました。でも、もう一度やってみましょうよ。彼女の言うことを汲んであげてグループを再編することも国際化のひとつですよ、と」。理解できない、というところに「なんで?」という疑問はあったけれども、大筋にはチャレンジして(やって)もいいと考えた。割勘でないと安くならないということも、もちろん頭をよぎったのは言うまでもない。淳くんは、「僕はあまりものを喋らないけど、間に入れたのは自分だけだったのに」としきりに反省していた。ふたりとも女の人に優しいのである。なんでか、イローナに「これからも仲良くやろうよ」ということをオレが言った。謝ったのは4人で話す機会が多かったこと。これは確かに気を使ってやってもいいかな、と思った。まぁ、4人が欧米人で1人だけが英語の苦手な日本人だったとしても、こうはしてくれないだろうけれども。なんか腑に落ちないけれども、そういう方向性で明日から旅を続けることになった。またキレなきゃいいんだけど。バクダンしょいこんじゃったよ。アフガンでバクダンってシャレにもならんなぁ。
今日の写真はバーミヤンの街をうろうろして撮ったものです。たくさんの人と仲良くなったよ。そのうちの一人が、なんとパキスタンのフンザで一緒だったえーちゃんとマキちゃんの写真を持っていたのだ!これはアップしなきゃ、というわけでおふたりさん、ぜひダウンロードして持っていってね。