2004-04-11 地球は、途方もなく大きかった。 [長年日記]
KABUL→BANDEAMIR-LAKE→KABUL
それは、紫色だった。途方もなく澄んだ紫色だった。あやめの花の色をそのままに、絞り汁にできたらきっとこの湖をつくることができるだろう。湖には小さなモスクがあった。聖地になるほど独特のオーラを放っているのだが、ここの、それはとても強烈で唯一無二のものだった。だれかれ構わずなぎ倒してしまうほど、暴力的でもあるし、春先の布団のように包み込むような感覚を併せ持っている。この湖(たち)の特徴を説明したい。まず一番下。モスクのある湖は紫色。とてつもなく深い色。その端からは透明な水が大量に流れ落ちていた。水のたっぷり入った容器を傾けたときのように。周囲を囲む山々は赤やら黄色の地層が剥き出しで荒々しい。たまに、ステップ気候に生えるような草がぽつりぽつりと所在なげにたなびいている。紫色の湖は、変化する。高台に登り、太陽が顔を出したときに、それは南国の空のような濃紺に変色した。その上に何個かゴルフ場のコースのような形をした湖があるのだが、それらはエメラルドグリーンである。そして、もうひとつ高くなっているところに紫かつ濃紺の湖がまたあった。凄まじいかな、地球のポテンシャル。狂いまくった風景。どんな画家も描ききれなかった湖が目の前に広がっていた。
帰り道、戦車の頭が落ちていた。首を切られたそいつは、むげにも傷口を天にさらしていた。錆びろ。と空は言う。雲がどんどんやってきて、夜更けには雨が降り始めた。