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sawadee!!紀行+


2004-04-06 地震と雲の反乱 [長年日記]

JALALABAD→KABUL

夜中に事件が起きたのは前日の日記のとおり。さて、何が起きたかというと…地震である。大地震。ゴーという音が聞こえたかと思うと、地面をシェイクするような揺れが続く続く。収まったかと思うと、今度は横揺れがやってきた。阪神大震災ほどではないけれども、海のうえにいるかのようなゆーらりゆらりとした揺れが我々を襲う。横揺れになる前にみんなでベッドの下にもぐりこんだ。それほど大きな地震だったのだ。自分も被災したけれども、阪神大震災の余震の中でもトップクラスのものと同等のものである。推定震度は5.5。朝起きたら壁中にヒビが入っていた。よくぞ崩れなかったものだ。
ジャララバードからカブールに向かう車は、カローラのバンだった。前にドライバーを含めて3人のアフガン人が乗り、後ろはオレたち3人。最初の方はそれなりにうまいことやっていた。ただ、パンクが多かった。今日も延々と続くケシ畑。こうも見ていると慣れてくるのが不思議。アフガンを出たら懐かしくなるかもね、なんて冗談を言ったりしながら何度も休憩を取りつつ車は進む。みんな砂煙で顔が真っ白。もちろん窓は閉めていても、である。山道に入って車はまたパンクする。うんざりしながら手伝ってやるのだが、淳くんが乗り込む前に車が発車したときがあった。後輪がかすめるように彼の足を轢き、えへらえへらと笑うアフガン人。プッツリいってしまいそうである。淳くんが大事には至っていないというので、ガマンして乗り込んでどんどん車は進む。まだ着いてもいないのに、金くれ、金くれ、と言い出す始末で、最後には無視していた。カブール市内に着いたのだが、泊まるホテルの近くにあるスピンザーホテルまで行ってくれと交渉する。面倒くさそうに、パーミットがないから行けないというドライバー。ウソに違いない。面倒くさいだけなのだ。問答が続いても、折れずしかたなくタクシーを探す。その前に荷物を車から降ろしたのだけれども、その際にあやまって予備のタイヤを落としてしまった。そのタイヤがアフガン人の足にあたる。たいした衝撃もないのに、サッカーのファウル以上に大げさにアピールするアフガン人。キレた。こちらは仲間が足を轢かれてガマンしているのである。まずお前が先に謝れ、という言い合いになる。ヤツらは何かオレたちを罵倒するようなコトバを言って去っていった。はっきりいって殺意がわいた一件である。タクシーに乗って、スピンザーを目指す。が、こちらも到着する前に金くれ、金くれと言いまくる始末。おまけに降りるときに払おうとしたら、アフガニスタンの金じゃないのでダメだ。と文句ばかり言い出す。だーかーらー、交渉はパキスタンルピーでしたじゃないか。それはパキスタンルピーで払うことを意味しているじゃないか。バカばっかりである。最初の印象が良くてもアフガン人はどこか信用できない。
宿を決めるときも似たような感じだった。「いくら?」と聞くと「20ドル」とまず言う。バカかオマエら。そんな値段は西欧だけで十分なんだよ。あんまり人をバカにするんじゃねー!と怒りながら言っても意味なし。やる気なさそうに「それは前のことだから」と言い出す始末。こんなばかげた会話のせいで何件かホテルを探す羽目になった。決めたのはパシュトゥニスタンというところ。窓は広く、ベッドは監獄のようなところである。一泊4ドル。これでも高い。内戦やタリバン駆逐のときに泊まりに来たジャーナリストどもが物価を引き上げてしまった。国際情勢を探る前に、国際価格を知ってほしいものである。東南アジアでもそう。物価を破壊する無知なツアー客のせいで、いつも我々は苦労する。それだけならいい、彼らのマインドが拝金主義になるところがもっとも嫌いなのだ。そして、絶対によくないことだと思う。簡単な理屈である。自然の多いところに行けば、その自然を壊さぬように観光するだろう。それと同じで、ローカルの人々の心を金に狂わせるということは、自然破壊にも等しい観光方法なのだ。
このパシュトゥニスタンというホテルは、ここいらにしては普通なのだが、面倒なことがひとつあった。警察が巡回に来るのである。何十分もバカげた質問に付き合わされる。こういう国の役人とは取り合わないに越したことはないんだけれども、やってくるのだから避けようもない。
寝る前にみんなで空を見た。それはとても不思議な光景だった。雲がみるみる形を変えていく。手が現れた。その手は地面を指差し、月の光を受けて、黒い影が街をサーチするように動き始める。別の雲がやってきた。その雲も形を変えて手となり、こいつが指差す雲に突っ込んでいったのだ。手首をつかむ手。そのうちふたつの雲は融合し、月の方へと流れていく。月が目玉の目となった。目玉がロールする。何かを探しているように。この国は今朝の地震といい、自然現象がとてつもなくおかしな国である。
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