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sawadee!!紀行+


2005-02-02 短編 [長年日記]

kobe

「あんた!気は確かか!!!」。
ばあちゃんが般若の面をつけたかのような形相で飛びかかってくる。えっ…、とフリーズするおれの手からグラスを奪うと、バサアと中身を流しにぶちまけた。カラン、カランコロンガランン。氷が乱暴な音をたててシンクの中を跳ねまわる。そのうちのひとつが、ゴロロロロ…と回転して、やがて止まった。「あんた!朝っぱらから何やってんの。アル中になるにはまだ早いで!」。ばあちゃんの声が、朝の住宅地に響き渡る。一山のテンションを越えた空隙を縫ってゆったりと朝のニュースが流れてきた。『NHKがタクシーを年間に43億円…』。放送を遮るようにばあちゃんは続けた。「あんたが、あんたがお父さんより早くアル中になるとは思わんかったわっっっ!」。おやじが眠たそうな顔で起きてくる。修羅場になる前に、違うんやがな、と説明した。まだ朝の6時半にもなっていない。実はかねてから取り組んでいたプレの案が朝方にようやくまとまったので、飲んで寝ようとしていたのである。社会的な信頼よりも、家族の信頼がほしい今日この頃である。