2006-07-14 中東戦争 [長年日記]
okurayama_yokohama
ハマスやヒズボラなど中東エリアのイスラム武装組織に対して、イスラエルの爆撃が激化しているのはご存知だろう。ニュースがどこまでやってくれるのか疑問なので、今後の中東情勢の展開や現状などを整理していきたい。メディアのように予測に対して報道責任が付きまとったり、スポンサーに偏った報道をしなくていいのが、個人のブログの良さ。大胆に根拠を示しつつ、情勢の推移を予測したい。そういうサイトでありたい。でも、これって言い換えると、責任がない=売れっ子じゃないってこと?いえいえ、素人に毛が生えた程度だけど、これを機に中東情勢の概要を知る日本人が増えてほしいのだ。
●ごくごく簡単に中東情勢ダイジェスト
1/第一次世界大戦でヨルダンとパレスチナはイギリス領となる。
※ユダヤ・アラブ軍がイギリスに協力してオスマン帝国に勝つ。この頃はユダヤ人とともに平和な国家を築こうとするアラブ人も多かったという。
2/第二次大戦前、イギリスはユダヤ人に「パレスチナをあげる」と約束し、アラブ人に「パレスチナを返還する」と二枚舌の約束。
3/第二次大戦後、ユダヤ人がパレスチナに入植
4/イギリスは国連に裁定を求める
5/1948年イスラエル独立
【それ以前の長い歴史の中で宗教上の争いはあった。しかしそれは、ユダヤ教とキリスト教、キリスト教とイスラム教、オスマン帝国とユダヤ+アラブ軍など国家間やイデオロギーの対立であった。以上を見てもらって分かるように現在の中東情勢は「イギリスの二枚舌」が悪い。「ユダヤ人とアラブ人は長期間に渡って血で血を洗う抗争を繰り広げてきた」という考え方は間違い。歴史的に見ても、イスラエルの地に住むイスラム教徒・キリスト教徒・ユダヤ教徒は共存共栄を願ってきた】
1948年よりひとつの宗教だけに旧パレスチナや聖地エルサレムの統治が任されることになった。これが現在のもめ事の発端。理由は多々あるが、ユダヤ人資産家がアメリカ経済を握っていたことに起因する説は正しいと思われる。つまり、資本主義が何よりも優先されたのだ。このことが第一次中東戦争を起こすことになった。イスラエルは第一次中東戦争を独立戦争と呼び「アラブ人の過激派の攻撃を防ぎ、ユダヤ人と多民族が安心して暮らせる、ユダヤ人主導の国家を樹立すること」を目的としていたとされる。
この戦闘と目的から周辺国にアラブ人の難民が大量発生し、過激派が生まれることになった。
その後、第二次中東戦争や第三次中東戦争を筆頭に数えきれないほどの争いがおこる。今回のレバノン爆撃は、第五次中東戦争にまでなる状況ではないが、拡大する恐れを多分に含んでいる。
●今回の爆撃
【ニュースで伝えられる内容】レバノンのイスラム過激派ヒズボラがイスラエル兵2名を拉致したことによる。そのため奪回作戦として爆撃をしている。
【ニュースを翻訳】ヒズボラを管理できないレバノンに対して、国家を交渉の場に引きずり出すためにレバノン国内を空爆。
【ニュース行間を読む】ハマスに対してヒズボラを攻撃することで意思を示す。
【ニュースナナメ読み】(アメリカが言うところの)悪の枢軸レバノン、シリア、イランを戦争対象にリストアップしているか、サミットへの手みやげ。
●現在の爆撃状況
レバノン南部、ベイルート市内、ベイルート国際空港、燃料タンク、シリアへの幹線道路(個人的には2004年に二度通った)など
●現在の中東国家間同盟状況
レバノン側=シリア・イラン
イスラエル側(アメリカ側)=表向きはなし
中立?=ヨルダン・エジプト
●今後予測される事態
まず書かなければならないのは「兵士2人の奪回作戦に空爆しまくって一般市民を殺しまくる」ことがおかしい。倫理観としてもおかしい。国の施作としてもおかしい。国際社会が容認しているのもおかしい。メディアが「殺し」を取り上げないのもおかしい。
これまでの中東戦争と違い、エジプトとヨルダンは経済などをアメリカ側に握られているため、軍隊をレバノン側に出すことは考えられない。したがって、紅海封鎖などイスラエルを封じ込める作戦は展開できず、レバノンとイスラエルの紛争に突入した場合はシリアが兵力を差し出すことが考えられる。しかしながら、9.11以降シリアもイランも軍隊を出せばアメリカに戦争の口実を与えるだけなので、自重するはず。とするとこの2国が可能なのは、ヒズボラやハマスに金銭や武器を提供することである。ようするに9.11は戦争を国家間の争いから、国家の委託を受けている武装組織同士の戦争に変えてしまった。
個人的見解だが、アメリカとイスラエルはヒズボラのメンバーがシリア領内に逃げ込むのを待っている。ようするにイラクの次に狙っているのはシリアに他ならない。この状況をアラブ国家がどう仲裁するかに委ねられているが、エジプトもヨルダンも裏側ではイスラエルと通じている。
もしサミット期間中に自体が沈静化すれば、アメリカが得意の怪しいリーダーシップを発揮してエジプトやレバノンに働きかけて仲裁が成立する。ようするにアメリカの国際的信頼回復を図るただの茶番だったということだ。茶番に巻き込まれて、人が死ぬ。それがいまの中東に他ならない。アメリカは人の命を弄んでいることになる。
もしサミット期間を越えても事態が沈静化しないなら、アメリカはシリア解体を狙っている。ようするにアフガン、イラクと同じ状況を辿ることになる。
●余談
さきほどBSNHKを見ていたら、アメリカの各メディアが「アメリカがこの国際舞台で何ができるか考えましょう」とすんなり言い放っていた。聞き逃せなかった。この思考回路こそが、世界のもめ事の原因なのだ。これまでの例では、この手の報道は次に日本に伝搬する。つまり「いくらかかるか」と「自衛隊を派遣するか」である。もしかすると、すでにアメリカは次のターゲットをシリアに据えているのかもしれない。でなければ、北朝鮮情勢を保留する今回の態度は説明できないのだ。
●まとめ
書きはじめから2時間半が経過…中東情勢って本当に少なく説明なんてできない、おこがましいことを日記でしようとしたものだと痛烈に感じた。ただ、自分が旅して現地の人の心に最も感動した国がシリアだったので、レバノンと関係が深いシリアを捨て置けなかったのだ。まとまりきらず、長い文章になってしまったけど、読んでくれた人がいたらありがとうございます。