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2006-04-26 エジプトの爆破テロ【こういう機会に中東情勢】

okurayama_yokohama

また滞在した所がドカーンとやられちゃった…。コロンボもデリーも、よく知っている所だったけど、今回もまた毎日歩いて通っていたところだよ。事件のおこったダハブというのは、シナイ半島(アフリカの東側&イスラエルとヨルダンの南)に点在する紅海リゾート地のひとつ。このエリアでは爆破テロが相次いでいるのね。他所よりも圧倒的な頻度で。理由はイスラエル人が来るから。
おそらくテレビや新聞を見た人は「エジプトは危険」と感じるんじゃないかなぁ?それは微妙に違うのです。正確には「シナイ半島は特に危険」。ピラミッド観光などの一般的なエジプトは、他にもテロの可能性のあるところと同レベルの危険性です、個人的には。つまり、IRAが活発だったときのロンドンや、印パが緊張しているときの両国首都も似たようなもの。突発的に何か起こる可能性がある場所。新婚さんたちを巻き込んだルクソールの乱射事件があまりに印象的だからか、エジプトに対して危険視しちゃうんだけどね。でも、それとこれはちと違うのです。シナイ半島は、二枚舌外交の連鎖が生んだ副産物なのですから。
まず、歴史から振り返ってみると、イギリスが悪い。中東全域に支配を拡大していたイギリスは第二次大戦のときに、アラブ諸国にはエルサレムの統治を移譲すると約束し、イスラエル人たちには同じくエルサレムを中心とした土地をあげると約束したのよ。つまり、対極の立場を取っているふたつの団体に、二枚舌の約束をした。で、知っての通りあそこにはイスラエルという国ができちゃった。アラブ諸国からすると、約束を破られちゃったわけ。自分たちの宗教の聖地エルサレムが返ってくるはずだったのに。ここから中東の不安定は始まっちゃった。
次に悪いのはエジプトの現ムバラク政権でしょう。こちらも二枚舌。聖地エルサレムをイギリスの裏切りとイスラエル人によって奪われたアラブ諸国は、一致団結してこれらに立ち向かうことにしたのね。イスラエルなんか存在しない、あそこにあったのはパレスチナという国だ!って。これは「アラブの大義」と呼ばれているんだけど、聞いたことのある方も多いはず。で、ムバラク。こいつはある意味かわいそう。アラブ諸国が一致団結されるのを嫌ったイスラエルとアメリカは、このアラブの大義の切り崩しにかかるわけ。中でも目を付けたのがエジプト。ある程度の軍事力を保有し、王国制でなく、地中海と紅海とスエズ運河を持っていて、悪の枢軸扱いするスーダンからも近い。ということから、アメリカ(もちろん背後にイスラエル)は猛プッシュしてエジプトにアラブの大義よりも自分たちにつくことを要求。いろんな外交的とりまとめから、エジプトは両サイドを意識した天秤外交に切り替わったわけ。あるときはアメリカ様で、あるときはアラブの大義。パキスタンと同じく、国の危機と考えると嫌いなアメリカとも手を組まなきゃならないし、国民や仲間のアラブの総意思も裏切れない。中途半端な国になっちゃった。
まとめると、エジプトはイスラエルという国の存在を認めて、ユダヤ教徒の聖地でもあるシナイ半島をイスラエル側に解放。そして(イスラム教徒にとって)招かれざる客が入ってきたイスラム教徒は、その政策に断固反対したい。ということから過激派のテロがシナイ半島で頻発するようになっちゃったわけ。それが証拠に、いつも起こるのは戦勝記念日とか、国の政策が生んだ祝日の前後に起こるわけです。
▼エジプトの公衆電話。パレスチナとイスラエルの両方の国に電話できるんですかー。そりゃ、すごいや。
どっちもあるって新しい
▼エルサレムの「岩のドーム」と「嘆きの壁」。すべてを引き裂いている場所。
ナナメに撮っちゃった…

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mtana [ただいま「ローマ人の物語」を読んでますが紀元前でも中東ってのは緊張状態に陥るのが日常茶飯事だったらしいすね。 200..]

TEKKAMAKI [う〜ん、風土かな。雨が豊かで、土壌が豊饒なら食いモンに困らない。人間、根本的に食いモンに困らなけりゃ緊張状態にはなら..]

uracci [mtana> 時間ができると、けっこう勉強しちゃうよね。あんだけ小中高でヤだったのにさぁ。 根本的にダメなのはアメリ..]