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2008-07-23 100の雑誌より1冊の本 [長年日記]

okurayama_yokohama

Ahmed Rashid著「タリバン―イスラム原理主義の戦士たち」に出てくるカンダハルのサッカースタジアム

「100の雑誌より1冊の本」を合い言葉に
お互いがんばろうと励まし合った仲間が本を出しました。
勝ち負けじゃないけど、こりゃ彼の勝ちだ。

まずはおめでとう!
そしておめでとう!
とてもおめでとう!

彼の名は桜木武史さん。
著作は 「戦場ジャーナリストへの道 カシミールで見た「戦闘」と「報道」の真実 」(彩流社)です。

僕たちが出会ったのはカブールでした。
その頃、僕は僕なりの思いがあって旅をしていたんだけれども
彼がカブールに滞在している目的を聞いて
ビックリしてしまったのを覚えています。

「ケシの闇ルートを追っているんです」

彼は戦場ジャーナリストの卵として
僕は旅ライターの卵としてその場にいたわけだけれども
桜木さんの方が、もっとピュアに目的に向かい、
そしてその途上だったわけです。
恥ずかしいくらい、無計画な自分…

まぁ、それはさておき、
桜木さんも自分も、旅で先行投資した分を原稿に変えて
「今回はトントンでした」とか報告し合っていたんだけれども、
桜木さんはアルバイトをしながら夢へ
自分は運命に流されるように、この業界でがんばっていたわけです。

国際情勢はというと
そのうち、アフガニスタンの状況が悪くなって
さすがの桜木さんも入りにくい国に。

いや、実際はタリバン支配下エリアの
クンジュラーブ峠からジャララバードを通って
カブールにその後も滞在していたんだけれども
どうしてもタリバンの脅威が高くて、
田舎の方まで行けずに帰ってきて
「情けない」と自分を責めていたのを思い出します。

その後、地震後のカシミールとパキスタンへ向かい
(おそらく)二度目のカシミールで銃撃され
その時に顎を打ち抜かれました。

ニュース映像で、血まみれになりながら銃から逃げる桜木さんを見て
「生きていて本当に良かった」と、当時も今も思うわけです。
当時、銃撃されたことはニュースになったけれども、
その後の彼の苦労は、撃たれたときより大きかったのではないか。

肩甲骨を削り取り、その肩甲骨で顎を作ったわけです。
そして背中の肩甲骨にあった場所には人工の骨。
肉が食えるようになるまで1年以上かかったと言っていました。

そんな桜木さんの渾身の一作が、やっと世の中に出るのです。
ぼかぁ、自分のことのようにうれしい。

カブールのJAMIL HOTELの屋上の小さな窓もない部屋で
自分と桜木さんとマイミクのよしやの3人が
シャルワルカミースというアフガンの民族衣装を着て
アザーンが鳴り響く蒸し暑い中、
本気なのか大風呂敷を広げているのか分からない未来を語り合ったっけ。

あのとき撒いていた種が花を付け実ったんだね。
おめでとう。

次は僕たちの番です。


(写真はAhmed Rashid著「タリバン―イスラム原理主義の戦士たち」に出てくるカンダハルのサッカースタジアム)