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sawadee!!紀行+


2006-11-01 阪神は讀賣と似てきた [長年日記]

okurayama_yokohama

阪神が広島の黒田を穫ろうとしている。そしてファンは「穫れー!」「来てくれー!」と大騒ぎ。ほんま、ええんかなぁ。金本、シーツ、黒田が先発で出たら、1/3も広島やん。オールスタークラスの選手を金で毎年穫り続けたら巨人と一緒のような気がする。
かつて、金満讀賣と我が阪神タイガースの魅力の違いは明らかだった。それは何かというとズバリ「低迷」だろう。「デキの悪い子ほどかわいい」みたいなところや、「あと一歩だったのに」という屈辱感や(稀にしかないけど)、「140km以上のスピードで投げる投手がいない」とか、そういう苦労を地域一帯で共にできているのが最高だった。雪国の人たちが吹雪のときに晴れ間を望むように、一瞬のAクラス入りを夢見ているのだが、毎回毎年惨敗を繰り返してきた。
しかも、その低迷を打開するための方法のすべてを間違えていたというのが、阪神タイガースらしさだったのだ。酒の席では誰もが監督批判になり、関西の人口の何分の一かは「おれが監督やった方がマシやって」と本気で話す。いや、実際問題、今年までオリックスを崩壊に追いやった中村監督のときなんて、近所の草野球をやっているオッサンの方が確かにマシだったかもしれない。
連れてくる外国人もすごかった。薪割りトレーニングをするヤツ、5月で帰国するメジャーの大選手…。ほとんどの選手が豪快に空振りをして散っていくわけでもなく、球をよく見たり手前でバットを止めて三振していく大バカものたちだった。ピッチャーもなかなかのものである。ゲイルやキーオはまだしも、ベン・マクドナルドやカート・ミラーってどんな選手だったっけ?と思い出すのも大変だ。新人も「今年はいけるで!」と、毎年デイリースポーツに踊らされっぱなし。スカウトの視力は常に0.1以下だ。FAした選手からも「え…阪神ですか…行っても6位でしょ」と遠ざけられてきた。でも、それはそれでよかったのだ。阪神タイガースらしいから。
おれ、この「らしさ」って勝ち続けることなんかよりも大切やと思うねん。それは、「自分たちらしさ」もそうやねんけど、「敵らしさ」もあると思う。黒田なんて日本代表のとき以外はタコ撃ちしてやりたい相手だし、いまやアニキと呼ばれている金本だってキリキリ舞させたかった最右翼の選手。で、オールスターの時だけ応援する(実は素晴らしい選手だから応援してみたかったんだよね、みたいな)という選手だった。大きな素晴らしい敵は敵として存在すべきだと思う。
そういう線引きをキチンとせずに「ほしー」「やってみたーい」「いきたーい」みたいな巷のギャルみたいな思考回路で何年もやっていると、いまの讀賣みたいに「王・長嶋から離れなければならない」とか「生え抜きとベテランのバランスが…」みたいなピントのずれたワケのわからんことになってしまう。夢を叶えさせてくれた大恩ある星野さんの頃から、なんか風向きが変わってきているよな。阪神タイガースは浪花節っぽくなくなってしまった。強い阪神に楽しさを見いだした新しいファンの人たちが冷めてしまうような弱さになったとき、あらためて球場に行きたいなぁ。日本酒持って、隣のおっさんたちが将棋を指しながら罵声を浴びせて、もうそれでいいよおれは。