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2006-09-14 とある企業の問題about地域密着 [長年日記]

okurayama_yokohama

今日はとある会社の取材で松戸へ。担当者よりもかなり早く付いたので、プラットホームの端っこの喫煙コーナーへ。む?なんだ?あの人だかりは。よく見ると喫煙者だった。どれだけおるねん。
画像の説明
▲ホームの端っこにはあらゆる年代の喫煙者が集まる

あと5分で着くという担当者を15分待って、お客さんのところへ。うわー、これは歴史があるなぁ、という会社。2Fには息子の代が取り仕切っている関連事業。今日は最近業績が落ちているこの会社(今回は2Fの息子側)の経営を立て直すべく、企業ホームページをつくるためにやって来た。さて…、と話を聞くが何か勘違いしておられる。ホームページを作れば、魔法のように業績が良くなると考えているのだ。お客さんの平均年齢はざっと見たところ40代後半。しかも、パソコンをそこまで必要としなかった仕事である。「いまはXPを入れましてねぇ」などと言っているが、どう見ても便利なワープロとしてしか使っていない。当然、ネットの効果などについては明るいはずもなく、内心これはヤバイと焦る。
「こんなことはどこの会社もやっていることで、やっとプラスマイナスゼロになるだけですよ」ということをやんわり伝えるが、一緒に行った担当の営業ができるだけ売りたいお調子者タイプ。「あれも、これも、あれも、これも」と当初の予定よりもページを増やすことに専念している。客も「なるほどー」とか言いながらも「なるほどー(これだけページを増やしたら増やした分期待できるってことだよね)」という感じ。それをこの営業は感じ取っていない。嗚呼、やばい、売れないのは企業体質と工夫の仕方が間違っているのに…。土俵に上がっていない企業をスタートラインに立たせるという企画なのに…。SEO対策を施すと検索でできるだけ上に表示できるというメリットはあるけど、それが成約や受注となるとまた別のものである。知れ渡った商品を扱うわけでもなく、単価が低い商品でもないものを扱っているその企業は、ホームページでクロージングまでできない。「見込み客=お問い合わせしてくれたお客さん」に営業をかけるのは自分たちなのである。SEO対策を施したホームページは「業績が伸びる」というよりは「100m走に例えるとスタート地点がちょっと前になる」だけなのに。
結局、双方の暴走をおさえながらも当初11Pだったものが19Pに。普通、我々の仕事はページあたり●万円とかなのでページが増えたら喜ぶものだが、このクライアントとはだいたいのサイト規模(大・中・小)でアバウトにギャラが決まっている。おそらく11Pの予定で予算を組んでいたからお値段据え置き、ライターとwebデザイナーが泣くことになる。それも、自分が責任を負うとはこの営業は思ってもいない。「仕事取れて良かったでしょ?」という感じなのだ。この前も「誰か手があいているwebデザイナーを知りませんか?」と聞かれたけど、これじゃぁ紹介できないよ…。まぁ、自分の場合は定期的に仕事をもらっているし、経営が微妙な時期を救ってもらったという義理を重んじてがんばってみるか、と思った。
このおれの素晴らしい義理人情に応えてくれないのが、この営業である。最後、ホームページに使う写真を撮っているときに1Fの親父側企業の写真も撮っていたら、親父側企業の社長が「最近の若いものは根性がない。この前も入れたらすぐに辞めた。環境が悪い、時勢が悪い」とおっしゃる。そういう考え方もありますな、と聞いていたら営業が「じゃぁ、採用のページも用意すべきですよ」と言い始めた。えーーーーーーーー!!!やめてくれ!
確かにこのクライアントは、企業ホームページも作っているし、それに関わる人材募集のページも作っている。とはいっても、タウンワークの1コマ程度のものだ。これだけ問題を抱えている企業に対して、求人を気楽に「やったらどうか」というのには驚いた。経営を立て直すのは、新しいビジネスモデルの創出、経営体制や経理関係のスリム化、そしてカンフル剤としての人材募集が主な要素だ。そして、問題がある企業ほどドッシリ腰を据えてかからなければならない。自分が診断したところ、この営業が所属するクライアントの力(ホームページ制作会社)では、経営難企業の一助にはなれない。リクルーティングに関しては初心者だ。「パート募集」と「問題企業への半終身雇用」ではハードルの高さがまったく違う。タウンワークのような広告を載せても、社長の「すぐ辞める」という悩みを解決はできない。うまくいっても、すぐ辞める人が定期的にやってきてくれるだけだ。根本的な解決には一切なっていない。
「若者が辞める」という悩みを持つこの企業の問題点は、古い企業体質と平均年齢の高さである。20代の若者がポツンと平均年齢40代後半のパッとしない企業に行きたいわけがない。若者はそのレベルの職なら選び放題だからだ。そこで長続きしてもらうためには、これはもう企業体質を変えてもらうしかない。もしくは、「歴史や技術の伝承=もう最後の世代だから若者を育てたい」という目標を「育てられたい人」と共有するとか、肚をくくることが必要なのだ。努力もなく「あ、ダメだった」「あ、うまくいった」なんて期待をまず捨てさせなければダメなのに、この営業ときたら。
こういう問題は地域密着で売ってきた正直商売の中小企業に非常に多い。街の電機屋さんなんてその最たる例だ。地域で回していたオカネが、ひとつ下の世代になると情報が増え選択肢が増えるため、「上の世代の仲良し企業」よりも「より安く」「より高品質に」を実現できる「ちょっと遠くのヨドバシカメラやビッグカメラ」を選ぶようになったからだ。まず、そこらへんの認識がない。もう、まるで危険認識ナッシング!なんでなんでなーーんーーでーーー?と言いながら社会不信になっておられる社長の希望を叶えるのは、何ステップも踏まなきゃならんから大変よ?営業さん?そこまで踏ん張れる?まず、おれ個人は不可能だと思う。ヨドバシよりも街の電機屋さんが売れるような強い芯が必要で、がんばるのは企業さんなのよ?ということを企業と営業に認識させることからおれの仕事は始まるらしい。
さっき営業から「リクルーティングのページも増やしましょう」とメールが来た。戦々恐々である。できるだけ、うまくコトを操らねばなるまい。軽い求人ページでは、義理を感じているお調子者営業マンが所属する会社(義理を感じているホームページ制作会社)が、長期的な目で見て信頼されなくなるからだ。がんばりますわ。続報あったらまた書きます。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
joy (2006-09-18 14:49)

こないだは貴重なお時間ありがとうございました。学祭、結局出れなさそうです。飲んだくれちゃいましょう笑<br>この松戸の企業、なんか他人とは思えない涙 食品関係ならなんかお手伝いしますよ。。。うちにも危険認識を!!!!<br>東京に行く度に転職欲が↑↑です。

uracci (2006-09-19 05:06)

飲みましょう。<br>それにしても、あの渋谷の灰が吹き出す焼き肉システムは新しい。<br>なんか考えなあかんなー。<br>せっかく店するんやし。(←なんでか勝手に決定してるし)<br><br>いや、この企業は80柿さんなんかとは比べようもないよ。<br>地方同族企業の成れの果て。とてもいい人たち。<br>でも、経営的にはアカンでしょ、という人たちです。